平成24年度厚生労働科学研究費補助金がん研究事業(H24-がん臨床-一般‐012)
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通院しながら働く

初期治療が終わった後、しばらくの間は定期的な経過観察、外来通院が必要になります。治療が一段落した後、いろいろと思い悩むことが見えて来て、不安が強まるときです。

このときのポイントは4つ。あなたの気持ち、体力を考えながら、3~6か月単位でその都度、情報整理・更新をしていきましょう。

Point 1
これからの情報を整理しましょう
Point 2
外来通院に際して利用できる制度を確認しましょう
Point 3
今後の見通しを把握しましょう
Point 4
周囲へ伝える範囲を決めましょう
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[Point 1] これからの情報を整理しましょう

治療と仕事を両立してゆく上で大切な事は、情報を整理することです。

そこで、次の4つの視点で情報を整理していきましょう。

(1)治療に関連すること

現在の症状、副作用や後遺症によって、今後の仕事のスケジュールを考えることになります。これからの治療に関する情報を、あなた自身がきちんと把握できていることが大切です。

(2)希望や思いに関連すること

仕事を続ける上で様々な選択を迫られることが多く、不安や焦りから迷うこともあります。診断~治療を経て、あなた自身の仕事への価値観も変化していきます。違和感を感じることもあるでしょう。

まずはあなたの仕事への希望や思いを整理してみましょう。

(3)仕事に関連すること

職種、職位、現在の仕事の状況、利用できる社内の制度も重要ですが、さらに職場の雰囲気、上司との関係、人事部の担当者の対応など、あなたの周囲の人間関係に関する情報整理をしてみましょう。

味方をさがすことが大切です。

(4)社会環境に関すること

治療後も働き続けることについてのご家族の理解や意見、経済的な状況、さらに地域の制度、患者会や支援団体の活用の有無、病院・勤務先・自宅の移動時間なども、社会環境的な要因として一度整理をしてみましょう。

通院や診察室では下記のものもあると便利です
  • 自分の思いや、医師への質問事項などを記録するメモ帳
  • ペンや鉛筆、蛍光ペン
  • 待合室で読むための本、新聞、雑誌、または仕事道具
  • 現金、クレジットカードなど、支払いに必要なもの
  • 保険証
  • カレンダーまたは手帳
    ※診察室では携帯等が利用できないときがありますので、書き込みができる手帳や紙ベースのカレンダーを持っておくと便利です。

ポストイットなどの付箋も、ちょっとしたことを書きとめるのに便利です。

書類を持ち歩きたくない場合は、電子ファイルにしてノート型パソコンやスマートフォンで管理してみましょう。必要な情報があらかじめ整理できていれば、仕事と治療の切り替えがとてもスムーズに運びます。最近では医療系の様々なアプリもでてきていますので、ご自身にあったものを活用してください。

また、治療を受けると領収書や説明書など、たくさんの書類がたまっていきます。これらの書類は捨てずに保管しましょう。お菓子の空き箱でも百均で売っているA4サイズの書類箱でも構いません。確定申告にも必要になりますし、あなたが歩んだ時間を振り返るときにも役に立ちます。

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[Point 2] 外来通院に際して利用できる制度を確認しましょう

治療をしながら仕事を継続していく上で、欠かせない情報が「制度」です。それは、「利用できる制度を最大限に活用する」ということが就労問題においてひとつの解決策であるからです。

ここでいう「制度」とは、以下の2つを指します。

  1. 勤務している企業の就業規則などの社内制度
  2. 健康保険などの公的制度
利用できる制度チェックシート

例えば、放射線治療で1ヶ月間通院をする場合に利用できる制度を考えてみましょう。一般的には、年次有給休暇を使用する、あるいは私傷病休職制度がある企業ではそれを利用します。企業によっては、永年勤続のリフレッシュ休暇があったり、積立休暇(時効消滅した年次有給休暇)があったりして、それを利用できるケースもあるでしょう。

万が一、そういった制度がないときは、人事担当者と話をし、配慮してもらえないか相談してみましょう。

まずは「利用できる制度チェックシート」を使って、必要な情報収集をしましょう。

(1)勤務している企業の就業規則などの社内制度

就業規則は、とても重要な情報源ですが、「入社時にもらったけど、一度も読んだことがない」という方がほとんどです。そこで、「利用できる制度チェックシート」を使って、自分の働き方に関する情報を整理してみましょう。利用できる制度が明確化されることで、治療や復職のスケジュール、その後の通院のスケジュールもより具体化できます。

(2)健康保険などの公的制度

「社会保険はわかりにくい」とよく言われます。しかし、社会保険制度の全てを知る必要はなく、「自分は保険給付を受けられるのか(要件)」と「そのためにはどんな手続きをしなければならないのか(手続き)」がわかればいいわけです。

逆に、要件を満たすことができなかったり、手続きをしなかったりした場合は保険給付を受けることはできません。

あなたがどの保険に加入していて、どの保険給付が受けられるのかを確認し(健康保険証に記載されています)、どのような手続きをするのかまで整理することが大切です。健康保険組合に加入している場合や協会健保であっても傷病手当金などは、勤務している会社が手続きをするケースもあります。

高額療養費など本人や家族がやらなければならない場合では、社会保険労務士に手続きを依頼することもできます。

健康保険
●自分がどの健康保険に加入しているかを確認しましょう

加入している健康保険によって、保険給付内容や申請方法が異なります。

必要な手続きをしないで、もらえるはずの給付を受けられなくなっては大変。加入している健康保険を確認する方法は、健康保険被保険者証(いわゆる健康保険証)の「保険者名称」の欄を見るのが一番正確です。

また、働き方(会社員、法人役員、個人事業など)によって、おおよそ下のように分けられますので参考にしてください。

法人
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)
  • 健康保険組合(企業・業種別)
個人事業
  • 国民健康保険(市町村)
  • 国民健康保険組合(業種別)
※一部の業種を除き、従業員5名以上の事業所については、全国健康保険協会(協会けんぽ)、健康保険組合に加入
公務員
  • 各種共済組合
●医療費で困ったら?
⇒高額療養費の限度額適用認定証を申請しましょう

高額な診療費の窓口負担を軽減する方法として、高額療養費の「限度額適用認定証」の交付を受けることができます。

この制度は、各健康保険窓口で事前に申請をすれば、医療機関での窓口支払が一定額で済むというものです。事前申請に本人が行けないときは、家族や勤務先企業、社会保険労務士などが代行することもできます。

もし事前に申請ができなかった場合は、高額療養費支給申請をおこなって払い戻します。

●給与が減額または無給になったら?
⇒傷病手当金の請求をしましょう

国民健康保険以外の各健康保険では、傷病手当金という制度があり、治療のため休んだことによる給与のカットをカバーする仕組みがあります。

カバーできる期間は支給が開始されてから1年6ヵ月間です。

手続き方法や給付内容の詳細は、自分が加入している健康保険等(保険証に連絡先等が書いてあります)や会社の事務担当者などに聞いてみましょう。

雇用保険(失業手当)
●すぐに働けない場合は、受給期間を延長しましょう

退職をした場合に、再就職までの生活を支えてくれるのが失業手当です。

失業手当の受給期間は、退職日の翌日から1年間と決められています。もし、治療中ですぐには働けない場合は、働くことができない日数分だけ受給期間を延長できますので、ハローワークに相談しましょう。

障害年金
●受給までのサポーターを見つけましょう

障害年金を受給できるケースもありますが、その手続きはとても複雑で、道のりが険しい制度と言えるかもしれません。行政窓口、ソーシャルワーカー、社会保険労務士、経験者などそれぞれがそれぞれの立場で相談に乗ってくれます。その中からよき相談者を得て、受給までのサポートをしてもらうことが大切です。生活保護についても同様です。

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[Point 3] 今後の見通しを把握しましょう

利用できる制度チェックシート

これからの働き方を考えるためには、職場の情報とがん治療の情報の両方が大きな要因となります。ここでは、がん治療の情報の整理に関するポイントを確認していきましょう。「私の治療シート」も活用しましょう。

がんと仕事の両立について主治医に確認すべき5つのポイント
  1. 治療中も働くことはできますか?
  2. 今までどおり働いてもいいのでしょうか?
  3. 何か制限はありますか?
  4. 他の治療方法はありますか?
  5. 治療に伴う副作用はどう対処すればいいのでしょう?
主治医へ伝えること

あなたの要望はあなた自身から主治医へきちんと伝えられるようにしましょう。遠慮はしないで大丈夫です。

〈外来予約の工夫〉

勤務時間を考慮して、朝一番あるいは夕方など、業務に最も支障の少ない外来受付時間帯を選び、主治医と決めるようにしましょう。
※「利用できる制度チェックシート」を確認。

〈職場の状況の説明〉

主治医は必ずしもあなたの業務内容に詳しいわけではありません。業務内容や職場の状況に関する適切な情報提供があれば主治医がイメージするための支援になります。リンパ浮腫や心の状態、どんな仕事をしていて何が支障となっているか伝えましょう。

また、何か変化があれば、それも伝えましょう。

〈診断書に記入すべき内容〉

職場への提出書類に関しては、次のような内容を加えてもらうと良いでしょう。

  • 就労が可能かどうか
  • →いつから可能か、どのような働き方が望ましいか(短時間から開始など)
    →やってはいけないこと、配慮を要すること
    →外来化学療法期間、副作用によるリスクが高い期間
定期健康診断への考え方

年に1度の健康診断は、がんを経験した方には非常に繊細な問題です。企業の実施する健康診断の目的は、あくまで「企業の安全配慮業務」に基づきます。それ以上の検査などは、最終的に相談者自身の判断に任せられています。たとえ会社が実施する健康診断であっても、この場合であれば企業が社員に対して安全配慮義務を果たしているかどうかに関すること以外での情報の利用は、目的外利用になります。つまり、業務を基因とした健康障害またはその予兆がないか? という視点で健康診断は行われており、業務外私傷病については社員が自らの意思を持って対処するということです。

診断を受ける際には、主治医と相談をして、受ける必要がない(病院での検査と重なる項目)や逆に受けておいてほしい項目(病院では検査をしていない項目)などを整理することを薦めるのも方法のひとつです。また、会社側から健康状態の確認を求められた場合には、必要に応じて主治医から診断書をもらうことも大切です。

企業の安全配慮義務

企業には労働安全衛生法の定めなどにより、労働者の生命・身体が業務上の危険から守られるよう配慮しなければならないという義務があります。

社員が心身の健康を害することを会社が予測できた可能性(予見可能性)があり、それを会社として回避する手段があったにもかかわらず(結果回避可能性)、手段を講じなかった場合に、安全(健康)配慮義務違反となります。

企業における健康診断などは、この安全配慮義務の一環と言えるでしょう。

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[Point 4] 周囲へ伝える範囲を決めましょう

仕事に戻ると人と接する機会が増えます。あなたが休んだ理由を知っている人、知らない人もいるでしょう。

まず、「伝えることに関して、なにが不安なのか?」をしっかり整理しましょう。その後、あなたが最終的に望む周囲とのあり方を共有し、本当に伝えるべき人物はだれかということを考えてください。

「配慮をしてもらいたい人」に、「どんな配慮をしてもらいたいのか」を明確にすることで、「誰に伝えるべきか」と併せてこの問題は明確になります。

場合によってはあなたからではなく、直属の上司などの口から同僚へ、配慮事項を伝えたほうが良い場合もあります。

実際に伝えるシーンを想定し、「誰にどんな順序でいつ伝えるか」まで、考えておきましょう

言ってみて動揺する前に、事前の心構えや告知について、あなた自身のスタンスがしっかりしているかを確認してみましょう。

(1)会社に伝える必要性

職場で病名を公表するかしないかは、多くの仲間が悩んでいます。

企業には、前述のとおり安全配慮義務があります。従って、あなたが配慮を望む事項があれば、その気持ちやことがらを人事担当者等へ伝える必要があります。

(2)情報開示の範囲
〈上司〉

直属の上司には、制度や休暇の調整だけではなく、業務上の関係機関との連絡の役割があります。

また、復職後は、業務上の配慮を促す役割も重要であるため、病名を言う必要はありませんが、悩みや困っていることはきちんと伝えるようにしましょう。

〈人事部〉

長期の休暇が必要な場合など、制度の支援を得る上では、人事部の協力は必ず必要なものになっています。今後のキャリアのことを考えると伝えたくないという方もいます。しかし、その結果として様々な負担が生じる可能性もあるということもあらかじめ理解しつつ、あなたの気持ちを大切にしましょう。そして、配慮が必要なことがあればそれを伝えましょう。

〈産業保健スタッフ〉

産業医・産業保健師がいる職場は必ずしも多くありませんが、企業内の制度の情報を多く持っている産業保健スタッフは、職場では身近な協力者になる可能性もあります。

支援体制は様々ですが、相談内容に関しては、産業医・産業保健師から企業への報告義務がないため相談してみるのも一手です。

〈同僚や部下など〉

必ずしも同僚へ知らせる義務はありません。職種によっては、同僚や部下などの業務上の協力、配慮を得ることが必ず必要になるかもしれませんが、一方で「普通に接して欲しい。」「(女性が)男性ばかりの職場でわかってもらえない。」など、あまり心配をかけずに治療を続けたい方もいます。

こちらも職場の雰囲気に応じて、少しずつ公開範囲を広げてみる方法があります。

〈取引先・顧客〉

伝える必要はありません。

ただ、信頼できる方なら、あなたが気持ちを伝えることで、味方になってくれる可能性があります。

「なぜ、この人に伝えたいのか?」を考えれば、あなたとの関係性が見えて来るはずです。

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