平成24年度厚生労働科学研究費補助金がん研究事業(H24-がん臨床-一般‐012)
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診断されたとき

働くあなたへ─がんと診断されたときに─

聖路加国際病院 乳腺外科部長 ブレストセンター長 山内英子

がんと診断されて、今、頭がいっぱいで、何から手をつけたらいいかわからないというのが本当のところかもしれません。これからの治療はどうなるのか、いったい自分のいのちはどうなるのか、仕事は続けられるのか、家族はどうなっていくのか、さまざまな思いが頭のなかをめぐっていらっしゃると思います。

一つずつ、時間をかけて、ゆっくりとそのからんだ糸をほどいてゆけばいいのでしょう。大切なことは、その1本1本を決して簡単に切ってしまわないことです。からんだ部分は、今は、ほどけなくても、そのままでいいのです。いつかはほどけるでしょうし、ほどけなくて、切らなければいけない時が来るかもしれません。でも、今はまだその時でないかもしれません。がんと診断されたときの仕事に対する考え方はそんな風でいいと思います。

診断を受けて、自分のなかの何かが抜けおちていく感じを経験されている方もいるかもしれません。でも、自分のなかの「大切なもの」が取られてしまったわけではないのです。

「大切なもの」が何かをあらためてもう一度考えるため、あなたに「診断」というかたちの機会が与えられたのかもしれません。自分の中の大切なものがゆっくりと見えてくることがあるのです。その中で、自分における仕事の意義が後で変わってきたりすることもあります。でも今は、その答えを出さなくていいのです。

自分が今、とりあえずすべきことを一つずつこなしながら、一歩ずつ、進んでいきましょう。

あらゆることを一人で解決しようとする必要はありません。家族や、友人、職場の仲間たち、そして医療関係者にサポートを求めていけばよいのです。覚えていてください。あなたは一人ではないのです。

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4つのポイント

働きながら治療を続けるには職場とのコミュニケーションが大切です。そのための4つのポイントについて考えていきましょう。

Point 1
まずは情報を整理しましょう
Point 2
利用できる制度を確認しましょう
Point 3
今後の見通しを把握しましょう
Point 4
会社へ伝える範囲を決めましょう
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[Point 1] まずは情報を整理しましょう

診断直後は誰でも混乱します。その中で大切な事は、まず、落ち着いて情報を整理することです。次の4 つの視点で情報を整理していきましょう。これらのプロセスの中で、医師に確認すること、依頼すること、あるいは職場の上司に依頼すること、人事に確認することなど、必要な作業が出てきます。

(1)治療に関連すること

がんの部位、ステージ、治療方法、現在の症状、考えられる副作用によって、今後の復職までのスケジュールを考えることになります。これらの情報をあなた自身がきちんと把握しておきましょう。

(2)「働くこと」への希望や思いに関連すること

がんの診断直後は、がんの治療や生活に関する情報も乏しい中、様々な選択を迫られることが多く、不安や焦りから迷うこともあります。診断〜治療を経て、仕事への価値観も変化することもあります。そこで、まずはあなた自身の仕事への希望や思いを整理してみましょう。即断することは禁物です。

(3)仕事に関連すること

職種、職位、現在の仕事の状況、利用できる社内の制度を整理しましょう。また、職場の雰囲気、上司との関係、人事部の担当者の対応など、周囲の人間関係についても、社内に理解者がいるかも含め、整理をしてみましょう。

(4)社会環境に関すること

家族の理解や意見、経済的状況、友人や親類などの支えの有無、さらに地域の制度、患者会や支援団体の活用の有無、病院・勤務先・自宅の移動時間なども社会環境的な要因として整理しましょう。

がんと仕事の両立についてあなた自身が考えるべき5つのポイント
  1. 今後の治療はあなたの仕事のスケジュールに影響を与えますか?
  2. あなたにとって仕事は経済的・精神的にどのくらい大切ですか?
  3. 働き方をフレキシブルに変更できますか? 周囲にそのような働き方をしている人はいますか?
  4. 仕事を続けるために、今の仕事を見直すべきですか?
  5. あなたの働く権利・休む権利を知っていますか?
追加で考えること
  • 治療中も働き続けたいですか?
  • 容姿の変化は仕事に影響がありますか?対応できる手段はありますか?
  • 時短制度やパートタイムなど働き方の一時的な変更はできますか? 元のポジションには戻れますか?
  • もし仕事を辞めたら経済的にどうなりますか?
  • もし仕事を辞めたら社会保障制度がどう変わりますか?
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[Point 2] 利用できる制度を確認しましょう

治療をしながら就労を継続していく上で、欠かせない情報が「制度」です。それは、「利用できる制度を最大限に活用する」ということが就労問題においてひとつの解決策であるからです。

ここでいう「制度」とは、以下の2つを指します。

  1. 勤務している企業の就業規則などの社内制度
  2. 健康保険などの公的制度
利用できる制度チェックシート

例えば、入院手術により会社を2週間休まなければならないという場合に利用できる制度を考えてみましょう。一般的には、年次有給休暇を使用する、あるいは私傷病休職制度がある企業ではそれを利用します。企業によっては、永年勤続のリフレッシュ休暇があったり、積立休暇(時効消滅した年次有給休暇)があったりして、それを利用できるケースもあるでしょう。

また、健康保険は、雇用主や雇用形態によって加入している保険、受けられる保険給付が異なるケースがあります。以上のように就業先によって社内制度や公的制度に違いがあります。「利用できる制度チェックシート」を使って、必要な情報収集をしましょう。

(1)勤務している企業の就業規則などの社内制度

就業規則は、とても重要な情報源ですが、「入社時にもらったけど、一度も読んだことがない」という方がほとんどです。そこで、「利用できる制度チェックシート」を使って、自分の働き方に関する情報を整理してみましょう。利用できる制度が明確化されることで、治療や復職のスケジュール、その後の通院のスケジュールもより具体化できます。

(2)健康保険などの公的制度

「社会保険はわかりにくい」とよく言われます。しかし、社会保険制度の全てを知る必要はなく、「自分は保険給付を受けられるのか(要件)」と「そのためにはどんな手続きをしなければならないのか(手続き)」がわかればいいわけです。

逆に、要件を満たすことができなかったり、手続きをしなかったりした場合は保険給付を受けることはできません。

あなたがどの保険に加入していて、どの保険給付が受けられるのかを確認し(健康保険証に記載されています)、どのような手続きをするのかまで整理することが大切です。健康保険組合に加入している場合や協会健保であっても傷病手当金などは、勤務している会社が手続きをするケースもあります。

高額療養費など本人や家族がやらなければならない場合では、社会保険労務士に手続きを依頼することもできます。

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[Point 3] 今後の見通しを把握しましょう

利用できる制度チェックシート

これからの働き方を考えるためには、職場の情報とがん治療の情報の両方が大きな要因となります。ここでは、がん治療の情報の整理に関するポイントを確認していきましょう。「私の治療シート」も活用しましょう。

(1)医師から聞き出すこと(カルテから読み取る内容など)
〈治療について〉
  • 治療のステージとその治療の見通し
  • 各治療のスケジュール、通院の頻度、副作用とその期間、注意点
  • 通院に要する時間
  • 他科受診の必要性とその頻度
〈復職について〉
  • 復職後に休暇をとる必要がある日数(入院治療期間、通院治療期間)
  • 勤務を開始しても良い時期、その際に注意するべき点
  • 徐々に業務量を増やしていくとすれば、その基準となる時期
(2)主治医へ伝えること

自分の専門家は自分です。要望はあなた自身から主治医へきちんと伝えられるよう調整していく必要があります。

〈外来予約の工夫〉

勤務時間を考慮して、朝一番あるいは夕方など、業務に最も支障の少ない外来受付時間帯を選び、主治医に伝えるようにしましょう。

〈職場の状況の説明〉
  • 治療方針や時期をあなたがどうしたいか
  • 仕事の内容(立ち仕事、接客業、男性が多い、など具体的に)

主治医は必ずしもあなたの業務内容に詳しいわけではありません。業務内容や職場の状況に関する適切な情報提供があれば主治医がイメージするための支援になります。

また、何か変化があれば(仕事の担当の変更、上司の異動など)、それも伝えましょう。

〈診断書に記入すべき内容〉

職場への提出書類に関しては、次のような内容を加えてもらうと良いでしょう。

  • 就労が可能かどうか
  • →いつから可能か、どのような働き方が望ましいか(短時間から開始など)
    →やってはいけないこと、配慮を要すること
  • 休みが必要な場合
  • →入院治療期間
    →外来化学療法期間、副作用によるリスクが高い期間
    自分の心が、働くことに向けてまだ不安定なときは、報告期間を少し短くし、こまめにコミュニケーションをとることも大切です。

企業が知りたいのは、今後の見通しとあなたの気持ちです。長い職業人生の中での「今」を考えてみましょう。

〈社会的背景について〉
  • 家族背景(配偶者など支援の有無、結婚・出産の予定など)
  • 経済的背景(就労・勤務の継続が必要な理由など)
  • その他の社会的背景(遠方からの通院、転居の予定の有無など)
化学療法について確認すべきポイント
  • どんな薬を使い、どんな副作用が予測されますか?
  • 治療の進め方や治療までの流れ(受診)を具体的におしえてください。
  • 治療のスケジュールを仕事のスケジュールに合わせることは可能ですか?
  • 治療ができる時間は何時から何時ですか?
  • 治療ができる曜日はいつですか?
  • 治療の頻度と治療期間、費用は?
  • 受付から治療が完了するまでどのぐらいの時間がかかりますか?
  • 治療には付き添いが必要ですか? 入院は必要ですか?
  • 副作用にはどう対処すべきでしょうか?
  • 副作用がもたらす仕事への影響は?
  • 副作用が起きている期間はどの程度ですか?
  • 治療中、注意すべきことはありますか?
  • 治療後に仕事に戻ることは可能ですか?
  • メモを頂くことは可能ですか?
放射線療法について確認すべきポイント
  • 放射線治療の効果について教えて頂けますか?
  • いつ、どこで治療を受けたら良いですか?
  • 治療は何回必要ですか?
  • 治療の進め方と治療にかかる時間、費用は?
  • 受付から治療が完了するまでどのぐらいかかりますか?
  • 副作用はどんなものが予測されますか?
  • 仕事への影響はありますか?
  • 治療中、注意すべきことはありますか?
  • 放射線治療中でも仕事は続けられますか?
  • 放射線治療のスケジュール、通院の時間帯を仕事に合わせることは可能ですか?
手術の前に確認すべきポイント
  • どのくらいの期間、入院が必要ですか?
  • 回復までにどのくらいかかりますか?
  • 仕事は休まなければなりませんか? 何日くらい休みが必要でしょうか?
  • 外部との連絡が全くとれない状態はどの期間になりますか?
  • 元の生活に戻るまでにはどのくらいかかりますか?
  • 職場に提出する必要書類は準備していただけますか? また、手続きや費用はどこで聞けば良いですか?
  • 手術の後のケアのための通院はどの程度続きますか?
  • できなくなる、し辛くなることはありますか?
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[Point 4] 会社へ伝える範囲を決めましょう

会社側の理解と協力は、制度を利用するにあたっても、業務上の協力や配慮を得るにあたっても必要です。しかし、会社があなたの病名を知ることによって、あなたが働きづらい環境になることも考えられます。

とても繊細な分野になりますので、これまでの勤務状況や組織の背景をじっくり確認しながら計画していきましょう。

(1)会社に伝える必要性

職場で病名を公表するかしないかは、多くの仲間が悩んでいます。

企業には、下記に示すとおり安全配慮義務があります。従って、あなたが配慮を望む事項があれば、その気持ちやことがらを人事担当者等へ伝える必要があります。

企業の安全配慮義務

企業には労働安全衛生法の定めなどにより、労働者の生命・身体が業務上の危険から守られるよう配慮しなければならないという義務があります。

社員が心身の健康を害することを会社が予測できた可能性(予見可能性)があり、それを会社として回避する手段があったにもかかわらず(結果回避可能性)、手段を講じなかった場合に、安全(健康)配慮義務違反となります。

企業における健康診断などは、この安全配慮義務の一環と言えるでしょう。

(2)情報開示の範囲(誰に伝えるべきかを考えましょう)

「誰に伝えるべきか」はほとんどの人が直面する課題です。

まず、「なにが正解か?」の前に、「伝えることに関して、なにが不安なのか?」を整理してみましょう。その後、あなたが最終的に望む周囲とのあり方を共有し、本当に伝えるべき人物はだれかということを考えてみましょう。

「配慮をしてもらいたい人」に、「どんな配慮をしてもらいたいのか」をはっきりさせることで、「誰に伝えるべきか」は明確になります。

場合によっては本人からではなく、直属の上司などの口から同僚への配慮事項を伝えた方が良い場合もあります。

実際に伝えるシーンを想定し、「誰にどんな順序でいつ伝えるか」まで、考えておきましょう。

〈上司〉

直属の上司には、制度や休暇の調整だけではなく、業務上の関係機関との連絡の役割があります。

また、復職後は、業務上の配慮を促す役割も重要であるため、「病名」を言う必要はありませんが、悩みや困っていることはきちんと伝えるようにしましょう。

〈人事部〉

長期の休暇が必要な場合など、制度の支援を得る上では、人事部の協力は必ず必要なものになっています。

今後のキャリアのことを考えると伝えたくないという方もいます。しかし、その結果として様々な負担が生じる可能性もあるということもあらかじめ理解しつつ、あなたの気持ちを大切にしましょう。そして、配慮が必要なことがあれば、それを伝えましょう。

〈産業保健スタッフ〉

産業医・産業保健師がいる職場は必ずしも多くありませんが、企業内の制度の情報を多く持っている産業保健スタッフは、職場では身近な協力者になる可能性もあります。

支援体制は様々ですが、相談内容に関しては、企業への報告義務がないため相談してみるのも一手です。

〈同僚や部下など〉

必ずしも同僚へ知らせる義務はありません。

職種によっては、同僚や部下などの業務上の協力、配慮を得ることが必ず必要になるかもしれませんが、一方で「普通に接して欲しい。」「(女性が)男性ばかりの職場でわかってもらえない。」など、それぞれ状況が異なります。職場の雰囲気に応じて、少しずつ情報開示していくことも大切です。

雇用主に確認すべき5つのポイント
  1. パートタイムなど働き方の一時的な変更はできますか? また、治療後はもとのポジションに戻せますか?
  2. 時短制度などは使えますか?
  3. 在宅勤務はできますか?
  4. 会社独自の私傷病休暇制度はありますか?
  5. 休憩室や医務室は利用できますか?
(3)伝えるべき内容と時期

伝えるべき内容と時期については、下のように整理されます。あなたの気持ちや身体の声を大切にし、タイミングに応じてこまめに報告をしていきましょう。

【入院治療前】 休暇を必要とする期間・治療予定
【入院治療中】 短期間であれば必ずしも必要でない・長くなるようなら休暇期間
【復職前】 復職可能な時期・その段取りなどの相談
【復職後】 勤務時間の調整・業務量の調整
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傷病手当金(再発の時・退職の時)の活用例

ここでは、傷病手当金を受給できるか、受給できないかの分かれ目を事例を参考に確認していきます。

まず、傷病手当金は、健康保険による収入保障のための給付ですが、全ての健康保険で用意されているわけではありません。

例えば、市町村による国民健康保険には、傷病手当金はありません。同じ従業員という立場であっても、小さな個人事務所で働いている人は傷病手当金がもらえない、ということもありますので注意してください。

傷病手当金の支給ルール
  1. 病気やけがのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。
  2. 同一傷病での支給期間は、支給開始日から数えて1年6か月です。
  3. 資格を喪失する日の前日までに継続して1年以上被保険者であった人は、資格を喪失した際に現に受けていた傷病手当金を引き続き受けることができます。
Q 一度受給した傷病手当金を再度受給することはできますか?(派遣社員・パート)

Bさんは、平成20年12月、乳がんの診断を受けました。手術を受けるために、翌21年1月から3月までの約3か月間、会社を休職し、傷病手当金を受給しました。

その後、同年4月から復職したBさんは、月に1〜2回程度通院し、再発予防のための術後補助療法(ホルモン治療薬)を受けるとともに、血液検査等による定期的な経過観察を行なっていました。検査で異常が見つかることなく、通常どおり勤務していたのですが、翌22年6月に乳がんの再発が見つかりました。Bさんは、再発治療を受けていましたが仕事は普通どおりこなしていました。

7月も終わりに近づいた頃、仕事量が増え、体力的にも万全ではなくなってきたため、もう一度休職をしようと思っています。しかし、一度利用した傷病手当金を再度受給できるかがわかりません、と相談に来られました。

 
A
社会的治癒と認められれば、再度受給できます
〈最初の受給から給付期間(1年6か月)満了後の再発において再度受給できたケース〉

傷病手当金は、同一傷病での支給期間は、支給開始日から数えて1年6か月と決められています。

Bさんの場合、最初の支給開始日は、平成21年1月であり、その1年6か月後は、翌22年6月です。つまり、再発が「同一傷病」なのであれば、再度傷病手当金を受給することはできません。

前後して発生した2つの症状が(この事例では初発と再発のことです)、同一の傷病であるかどうかが問題になります。健康保険法では、医学的に同一の傷病に基づくものであっても、その間に相当期間にわたって社会復帰を果たしていた場合には、社会的には治癒していると考えて前後の症状を別個のものとして扱うことがあります。

再発が見つかるまでの約1年4か月間、Bさんは、検査で異常が認められることもなく、もちろん特段の症状もないまま経過しており、ほとんど会社を休むこともなく通常どおりに勤務していました。これにより、この1年4か月という期間は、社会的治癒に相当する期間であり、再発は、同一の傷病ではないということが認められて、再度傷病手当金を受給することができたものです。

Point

健康保険法での治癒(社会的治癒)と医学的な治癒との概念は異なります。この事例のように再発であっても、相当期間(この場合は、1年4か月)にわたって社会復帰を果たした場合は、一般的な感覚として、前後して生じた症状を別個の傷病として受け取る方がむしろ普通であるという考え方を取り入れて、法的に判断しています。

生活に関わる重大な問題なので、このような複雑なケースでは社会保険労務士などの専門家に相談してみましょう。

Q 退職後、傷病手当金を受給できなかったのはなぜですか?

40代のCさんは、ある企業で3年間正社員として働いていました。ここ半年程、治療のために休職をし、その間傷病手当金を受給していましたが、体調が思わしくないため退職を決意しました。傷病手当金を在職中に受給していれば、退職後も継続して受給できることをCさんは知っていました。退職日当日、仕事の引き継ぎと退職の手続きのために会社に出勤し、会社もその日の給与を支払いました。

その後、全国健康保険協会(協会けんぽ)に傷病手当金の支給申請をすると、傷病手当金が受給できなくなっていました。「なぜ受給できないのでしょうか?」と相談にこられました。

 
A
退職後の支給要件を満たせなかったため、不支給となりました
〈受給していたにも関わらず、退職後の継続受給が受けられなかったケース〉

傷病手当金は、(a) 資格を喪失する日の前日までに継続して1 年以上被保険者であった人は、(b) 資格を喪失した際に(c) 現に受けていた傷病手当金を引き続き受けることができます。Cさんのケースでいうと、(a) はクリアしていました。(b) の「資格を喪失した際に」は「退職日当日に」ということです。(c) の「現に受けていた」は「受給していた、もしくは受給できる状況であったかどうか」ということになります。Cさんは、退職日当日に引き継ぎという仕事をして働いてしまい、給与も支払われていましたので、要件を満たすことができなかったのです。

Point

健康保険の支給要件は、とても形式的かつ厳密です。一見、会社員として何も問題のない行為にもかかわらず、思わぬ落とし穴があるのです。単に知らなかった、あるいは誤解していた場合であっても、要件を満たしていなかったのであれば、不支給決定を覆すことは不可能です。

「事前の確認」をしっかりと!このケースのような場合は、協会けんぽや健康保険組合などに直接確認するのがよいでしょう。

あきらめないで!

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